カチカチ山

 カチカチ山といっても昔話のほうではなく,太宰治の例の換骨奪胎集「お伽草紙」の中のやつの話である。

 ここのところNHKはどういうつもりか,太宰治短編小説集なるものをやっている。私は,こういうものは原作のイメージが壊れるのであまり見ない。しかし,昨夜,ミス・マープルの「無実はさいなむ」(←こっちのタイプは見るのだ。)に引き続いてあったのが「カチカチ山」だった。で,なんとなく見てしまった。マープルもカチカチ山もしっかり座って見たわけではないので,それで批評するのは製作者に悪い。しかし言わせてもらえば,そこそこいい出来だった。(謝)

 配役は,というほどのものでもないが,ウサギ―満島ひかり・タヌキ―皆川猿時・作者―菅原永二

 ところで太宰といえば,ご多分にもれず,初めて読んだのは中学ごろだ。最初が「人間失格」で,これを読んでこの作者のものは読まないと決め,この時期が長く続いた。自分に身につまされる点があったせいか,ひどく気分が悪くなり薄気味悪さを感じて受け入れられなかったのだ。で,「お伽草紙」や「富嶽百景」はかなり後になって読んだ。「富嶽百景」は一文が高校の国語の教材にでも出てきて読んだのではないかと思う。「お伽草紙」のほうは,何の拍子で手に取ったのか忘れたが,相当に強烈な毒を含んでいる。「人間失格」とは違いかなりファルス仕立てなので,糖衣をかぶっているように感じるが……毒素的には,こちらのほうが強いだろう。

 「カチカチ山」はやはり最後のタヌキの一言,「惚れたが悪いか。」がしっかり記憶に残っている。しかし,この年になると,処女の残酷さというものはまた少年の酷薄さとも通じるのではないかと思うのである。若いということはそういうことではないだろうか。だからこそ,年をとると魅かれるということにもなるのだ。

 そして,ベニスで死んだりすることになる。(笑)